そもそも会社員として働いている人の中には、確定申告は自分には関係ないと考えている人も少なくないのではないでしょうか。しかし、会社員でも確定申告をした方が税金面で得をするケースや、確定申告をしなければ罰則が課される場合もあります。
今回は会社員でも確定申告をすることによって控除できるものにはどのようなものがあるのかと、不動産投資によって確定申告で控除できるものが増える理由について解説します。
控除とは?
そもそも『控除』とは、差し引くという意味の言葉で、『所得控除』と『税額控除』の2種類があります。いずれも、控除できるものの種類や金額が増えると、納税額が下がり、節税効果が大きくなります。
つまり、『控除』をよく理解し、活用できるものを漏れなく取り入れることが節税の第一歩となるのです。控除を活用して節税することは、個人事業主や会社経営者の特権ではなく、会社員でも可能なものも多くあります。
たしかに、会社員の場合、給与所得者控除という会社員のためのみなし経費が存在するため、一部控除できないものも存在しますが、会社員でも認めれられている控除を活用するだけで、数万円~数十万円ほど税金が安くなるケースも珍しくありません。控除を上手に活用し、支払い過ぎている税金を取り戻しましょう。
次に、所得控除と税額控除の違いを解説します。
所得控除とは?
所得控除とは、所得税と住民税の金額を計算する上で基となる『課税所得』を求める上で、家族を養っているか、生命保険に加入しているか、寄付をしているかなど個人の事情を反映させるための制度です。
所得控除の金額分税金が安くなるわけではなく、例えば所得税率20%で所得控除の金額が100万円の場合、所得税が20万円安くなる計算で、所得税率が高いほど節税効果も高まります。
所得控除には15種類あり、社会保険料控除、医療費控除、生命保険料控除、扶養控除、配偶者控除、寄付金控除、基礎控除などがあります。
税額控除とは?
税額控除は、所得控除とは異なり、控除額をそのまま所得税から差し引くことが可能で、代表的なものが『住宅ローン控除』です。住宅ローン控除の金額が30万円であれば、所得税が30万円安くなり、所得控除よりも節税効果が高くなります。
会社員が特に覚えておきたい控除7選
前述の通り、所得控除だけでも15種類ありますが、その中から、会社員の人が使うことが多く、特に覚えておきたい控除を7つピックアップして解説します。
【所得控除】医療費控除
多額(目安は年間10万円以上)の医療費を負担した場合、下記①②のうちいずれか多い方の金額を控除することができます
①正味の医療費-保険金などで補てんされる金額-10万円
②正味の医療費-保険金などで補てんされる金額-総所得金額等×5%
また、2017年から始まったセルフメディケーション税制を利用すると、年間12,000円以上特定一般用医薬品等を購入した場合の費用が最大88,000円控除できます。例えば年間15万円分の特定一般用医薬品等を購入した場合でも、控除できるのは88,000円です。
医療費控除もセルフメディケーション税制も申告者1人分だけでなく、生計を一にする親族間の負担額を合算して、申告することができます。
医療費控除は、総所得金額の5%超の医療費を負担していると控除ができるため、例えば総所得金額が100万円の人の場合、年間5万円超の医療費負担があれば、控除を受けることができます。
このように、所得が低い人の方が、控除を受けられる金額の下限が低くなりますが、医療費控除は所得控除のため、10万円以上医療費負担があった場合は、家族の中で所得が高い人が申告した方が、節税効果が高くなります。
なお、医療費控除とセルフメディケーション税制を併用することはできません。
原則控除できる金額が大きい方を選択し、10万円以上の医療費負担があった場合は所得が高い人が申告した方が得をする可能性が高いと覚えておくとよいでしょう。
【所得控除】寄付金控除
寄付金控除で代表的なものには『ふるさと納税』があります。ふるさと納税以外にも、特定の非営利団体などに行った寄付も、寄付金控除の対象となります。
ふるさと納税などを行った場合、寄付した金額から2,000円を差し引いた金額が控除できます。
ただし、所得によって控除できる金額には上限があり、その限度額の目安は以下の通りです。
本人の給与金額 | 独身・共働き※① | 夫婦※② | 夫婦+高校生の子1人 |
500万円 | 61,000円 | 49,000円 | 40,000円 |
800万円 | 129,000円 | 120,000円 | 110,000円 |
1,200万円 | 242,000円 | 239,000円 | 229,000円 |
※①共働きとは、配偶者控除(配偶者特別控除)の対象ではない夫婦を指します
※②中学生以下の子がいる場合も、控除金額の限度額は変わりません
【所得控除】小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済は、個人事業主や小規模な会社経営者を対象とした制度のため、会社員の人には耳なじみがないかもしれませんが、iDeCoの掛け金も小規模企業共済等掛金控除の対象で、iDeCoの掛け金は全額所得控除になります。
ただし、iDeCoの掛け金には上限があり、会社員の場合は企業年金の有無などにより月額2万円~2.3万円が拠出限度額です。(企業型確定拠出型年金の場合の拠出限度額は月額5.5万円)
会社員でも資産運用と節税を同時に行うことができる数少ない制度ですので、積極的に活用するとよいでしょう。
【所得控除】生命保険料控除・地震保険料控除
生命保険料は最大年間12万円、地震保険料は最大年間5万円控除できます。地震保険とセットで加入する火災保険料は控除の対象ではないため注意が必要です。
これらの控除を利用するために、必要ない保険に加入するのは本末転倒ですが、対象となる保険料を支払っている場合は、漏れなく申告して控除を受けましょう。
生命保険料控除及び地震保険料控除は年末調整で勤務先に申請することで控除することができますが、年末調整で申請を忘れていた場合などには確定申告で対応することもできます。
【所得控除】扶養控除
高校生・大学生の子供など、16歳以上の生計を一にする親族がいる場合、下記の通り、扶養親族1人当たり38~63万円の控除を受けることができます。
区分 | 控除額 |
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 |
特定扶養親族(19歳以上22歳未満) | 63万円 |
老人扶養親族(同居老親等以外の者) | 48万円 |
老人扶養親族(同居老親等) | 58万円 |
仕送りなど一定の条件を満たす必要がありますが、年金暮らしの親を扶養に入れることで節税できる場合もあります。所得が高い人の場合、年間数十万円の節税につながる可能性もありますので、該当する親族がいる場合は扶養に入れることを検討してみるとよいでしょう。
【所得控除】配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者控除は年間所得が48万円以下、配偶者特別控除は年間所得が48万円超133万円以下の配偶者がいる場合に控除を受けることができます。
ただし、2020年から控除を受ける納税者本人の合計所得金額が900万円を超えると控除できる金額が減り、1,000万円を超える場合は配偶者控除や配偶者特別控除を利用できなくなったため注意が必要です。
【税額控除】住宅借入金等特別控除
通称『住宅ローン控除』といわれ、他の控除とは異なり、税額控除のため、控除額がそのまま所得税から差し引かれます。
住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合、2022年4月に施行された税制改正前は住宅ローンの残債の1%が控除率でした。しかし、税制改正後は控除率が縮小し、残債の0.7%の税額控除を最長13年間受けることができるように変わっています。
なお、住宅ローン控除を利用するためには
・新築から6ヶ月以内に入居し、年末まで住み続けていること
・床面積50平米以上、かつ床面積の半分以上を住居として利用していること
・住宅ローンの残存期間が10年以上で金融機関等から有利子で借り入れていること
などの条件を満たす必要があります。
会社員でも確定申告をした方がいい人とは?
会社員でも確定申告をすることによって払い過ぎた税金が戻ってくる可能性が高いため、確定申告をした方がいい人には以下のような人が挙げられます。
・年の途中で退職し年内に再就職しなかった人
・多額の医療費を負担した人(目安は年間10万円以上)
・ふるさと納税を行った人(ワンストップ納税を利用した場合を除く)
ここに挙げた人が確定申告をするかしないは任意ですが、還付申告(払い過ぎた税金を払い戻してもらうための申告)だけであれば難しくなく、申告できる期間も5年間と長いため、5年以内にあてはまっている年があった人は今からでも還付申告にチャレンジしてみましょう。
会社員でも確定申告をしないといけない人とは?
前段落で例に挙げた人の確定申告は任意でしたが、会社員でも確定申告をしないといけない人もいます。
確定申告が任意ではなく義務なのは次のような人です。
・給与・退職所得を除き、その他の所得が20万円を超える人
・給与収入が2,000万円を超えている人
・2ヶ所以上から給与を受け取っている人
・株式投資などの利益があった人(NISAや特定口座の場合を除く)
これらに該当する人が確定申告をしないと、無申告加算税と延滞税が課されます。本来支払う予定だった税金額よりも数十%多くの税金を支払わなければいけなくなるため、該当する人は必ず確定申告を行いましょう。
会社員でも認められる経費|特定支出控除とは?
第二段落で紹介したもの以外に会社員でも経費計上することができる経費(特定支出控除)があります。ただし、いずれの場合も会社負担の部分は対象外となるため、保険の外交員など経費が原則自己負担となるような働き方をしている場合以外では、そもそも会社員で給与所得控除以上の経費を負担しているケースは多くなく、利用者は会社員数万人に1人などといわれています。
特定支出控除の対象となる経費にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
勤務必要経費
仕事に必要不可欠な専門書、制服や作業着の費用、顧客への接待、贈答品などの購入費用は、年間で65万円まで必要経費として控除することができます。ただし、会社から購入費用を受け取っている場合はその限りではありません。
通勤費・帰宅旅費・転居費
通勤費や、単身赴任の場合の帰宅費用、転勤に伴う引っ越しにかかる費用なども、会社からその費用を受け取っていない場合に限り、会社員でも経費として損金計上することができます。
資格取得費・研修費
仕事に直接必要な知識や資格を取得するための費用は、雇用主が必要性を証明したものに限り、経費として計上することが認められています。
会社員が不動産投資をすると控除できるようになる経費とは?
不動産投資を行っている人は、マイホームでは控除することができない費用を、不動産投資(不動産賃貸業)の経費として損金計上できるようになります。そのうち代表的なものを紹介しましょう。
不動産投資(不動産賃貸業)において、どのような費用が経費で、どのような費用は経費にできないかは、下記の過去記事で解説していますのでご参照ください。
【要注意】それは不動産投資の経費にできません!確定申告の流れも解説!
減価償却費
減価償却費とは建物部分の経年劣化による価値の減少を経費として計上できるものです。減価償却費は実際の支出を伴わないため、減価償却費を経費計上できることが、不動産投資が節税になるといわれている理由の一つです。
なお、時間の経過に伴って価値が落ちない土地部分は減価償却することはできないため、同じ構造の建物であれば、不動産購入価格に占める建物価格の割合が高いほど節税効果は高くなります。
借入金利子
投資用不動産の購入に当たってローンを利用したとしても、住宅ローン控除の対象にはなりません。その代わりに負担した利子を経費にすることが認められています。ただし、不動産所得がマイナスの場合は、土地分の利子を経費に入れることはできないため注意が必要です。
税金・保険料
マイホームで控除できるのは地震保険料だけですが、投資用不動産の場合は固定資産税や不動産取得税、登録免許税、印紙税などの税金や火災保険料も不動産投資(不動産賃貸業)の経費にすることが認められています。
なお、火災保険料や地震保険料は、5年分・10年分の保険料をまとめて支払った方が安くなるため一括払いするケースもよくありますが、その年の経費にできるのは1年分のみです。それ以外は、一旦資産計上し、毎年期間対応分を経費化していきます。
修繕費
マイホームの場合は、リフォーム等を行った費用を経費にすることはできませんが、投資用不動産の場合は、設備の修理や交換、原状回復にかかった費用のうちオーナー負担部分を経費として損金計上することが認められています。
ただし、不動産の資産価値を高めるために行った工事の費用に関しては、資本的支出に該当し、固定資産に計上されるため、支払った年に工事費用の全額を経費にできるとは限りません。
管理委託料・専門家報酬
投資用不動産の場合は、不動産会社に支払う管理費・修繕積立金・管理代行手数料をはじめ、確定申告を税理士に依頼する場合にかかる税理士費用、司法書士に支払う登記費用、金融機関に支払うローン事務手数料などを経費にすることができます。
その他投資用不動産のみにかかる費用
前述の5つの経費以外にも、不動産投資を行う場合は、購入時に支払う仲介手数料や入居者募集時にかかる広告費など、マイホームには原則かからない費用が発生する場合があり、仲介手数料や広告費は経費計上が認められています。
そのほか、入居者に無料のインターネット環境を提供するために必要となる工事費用やインターネットの月額利用料なども経費計上が認められています。
確定申告にチャレンジして払いすぎた税金を取り戻そう!
会社員でも、確定申告をした方が得をするケースや、確定申告をしないと罰則がさせられることがあります。どのような場合に、確定申告をした方がいいのかをよく理解し、今回紹介したケースに過去5年以内にあてはまっていた場合は、確定申告をして払い過ぎた税金を取り戻しましょう。
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