2020年10月29日、第一生命保険株式会社が、実施している確定給付企業年金の予定利率を19年ぶりに1.25%から0.25%に引き下げるというニュースが大きな話題を呼びました。そして、先日2022年4月6日には、国内最大手の日本生命も21年ぶりに予定利率の引き下げを決定し、2023年4月から、企業年金保険の予定利率を現在の1.25%から0.5%に引き下げるという発表がありました。
企業年金のニュースと聞くと、勤め先に企業年金はないので自分たちには関係ないと考える人も多いかもしれませんが、企業年金とは関係ない人の生活にも、予定利率の引き下げは一定の影響を及ぼします。
本記事では、そもそも予定利率とは何か?引き下げになるとどのような変化が予想されるのか?私たちはどのような対策を打っておく必要があるのか?といったよくある疑問にわかりやすくお答えします。
生命保険の保険料を決める3つの要因
生命保険料の金額は『予定利率』『予定死亡率』『予定事業費率』の3つの要素を基に計算されます。まずはそれぞれの意味を確認しましょう。
予定利率とは?
保険会社は、契約者から払い込まれた保険料の一部を将来の保険金の支払いに備えて株式や債券、不動産などで運用しています。予定利率とは、その運用で得られる予想運用利回りのことで、保険会社はあらかじめ見込んだ運用による一定の収益の分だけ保険料を割り引いて還元しています。そのため、予定利率が高いと割引率も高くなり、支払う保険料は安くなります。
この運用が予想よりもうまく行った場合には利差益が発生し、一部保険会社の商品には、この利差益を配当金として分配するものも存在します。
予定利率は保険会社や商品によって異なり、契約時点の予定利率を基に保険料が決定されます。掛け捨ての保険よりも貯蓄性の高い保険の方が予定利率の影響を受けやすいのが特徴です。
予定死亡率とは?
予定死亡率とは、性別や年齢別の死亡者数の統計データから、契約期間中に死亡する人の割合を予測した数値です。予定死亡率を高く見込んだ場合、支払う保険料も高くなります。見込んでいた死亡者数よりも実際の死亡者数が少なく、保険金の支払いが少なかった場合には死差益が生まれてきます。
予定事業費率とは?
予定事業費率とは、人件費など保険会社の運営にかかる必要経費の割合のことです。予定している諸経費よりも、実際にかかった諸経費が少ない場合には費差益が発生します。
予定利率はどのようにして決まるのか?
予定利率は、金融庁が国債の利回りを基準に決定している『標準利率』を基に各保険会社が決めています。
企業努力により、標準利率が下がっても、予定利率を引き下げない場合もありますが、予定利率を下げずに契約者に一定の利回りを約束してしまうと、保険会社の利益が圧迫されてしまうリスクをともないます。そのため、完全に連動しているわけではないものの、標準利率が下がれば、予定利率を引き下げるのが一般的です。
予定利率の引き下げから予想される変化とは?
先述のとおり、国債の利回り低下にともなって予定利率の基準である標準金利は順次引き下げられ、2020年1月には、ついに円建ての一時払い終身保険の標準利率が最低水準である0%となりました。予定利率が下がると、私たちの生活にはどのような変化が起こると考えられるのでしょうか。具体例を挙げて解説しましょう。
生命保険料が高くなる
まず、予定利率が引き下げられることは、予想運用利回りが下がるのと同じ意味のため、同額の保険金を受け取るためには、より多くの生命保険料を支払う必要が生まれてきます。予定利率と生命保険料は反比例の関係にあるため、一方が下がると、もう一方が高くなるのです。
ただし、生命保険料は契約時点で決まりますから、途中で予定利率が引き下げになった場合でも、契約中の生命保険料は変わりません。
一般的に、解約返戻金の少ない保険や掛け捨ての保険は予定利率引き下げの影響を受けにくく、反対に貯蓄性の高い年金保険や学資保険などはその影響を大きく受ける傾向にあります。
貯蓄性の高い生命保険は姿を消す
バブル崩壊後、市場金利は大幅に低くなり、銀行の定期預金の利率を見ても、キャンペーン定期0.2%!などと、一時期は8%程度の定期預金のポスターが各金融機関に貼られていたことが嘘に思えるような状況が続いています。市場金利が下がると銀行の定期預金の金利も下がるのと同じように、生命保険の予定利率が下がると、貯蓄性が高い保険の利回りも下がります。予定利率の引き下げにともない数々の高利回りの保険商品が姿を消し、近年では、返戻率が100%未満の学資保険なども珍しくなくなりました。
利回りが低下し、生命保険に加入するメリットが減る一方でも、途中解約などのリスクは利回りが高い頃と変わらずに残っています。そのため、貯蓄目的で生命保険に加入するメリットは、超低利率の現在、ほとんど無くなってしまったと言っても過言ではありません。
もし、現在利回り3%以上のお宝保険に加入できているのであれば、それは非常にラッキーなことですので、満期まで解約しないことをおすすめします。しかし、これから生命保険に加入することを検討している場合は、予定利率が低くあり続ける限り、生命保険に加入することで資産を増やすことは期待できないため、生命保険以外の方法と比較検討しながら、資産形成を考えた方がよいでしょう。
投資を検討する必要性が高まる
今、年金を受け取っている世代は、バブル景気の恩恵を受けられた世代です。バブル当時であれば、定期預金に預けているだけで、10年程度で資産が倍になることも珍しくなかったため、わざわざリスクを取って投資をする必要性は低かったでしょう。そのため、バブル景気の恩恵を受けられた世代の人には、『投資をする必要はない』、『投資は危険なので手を出してはいけない』と考える人も少なくありません。
しかし、現在のような超低金利の状況下で、預貯金や貯蓄系の保険のみで資産を増やすことは夢のまた夢になります。リスクを取らずに安定的かつ効率的に資産形成をすることはまず不可能な状況です。そのような変化を受け入れ、投資を勉強し、挑戦してみる必要性がますます高まってきています。
予定利率が低い時期に検討したい3種類の投資とは?
預貯金や貯蓄系の保険で効率よく資産形成を行うことが難しい時期に、検討したい3つの投資を紹介します。例えば65歳から月額10万円の私的年金受け取りたいと考えた場合にどのような選択肢があるのでしょうか。各手法のメリット・デメリットもお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
変額保険や外貨建て保険
生命保険を中心に資産形成を考える場合、これまでお伝えしたように予定利率が低い時期には貯蓄性の高い保険では効率よく運用することができないため、変額保険や外貨建て保険など比較的リスクの高い生命保険を検討する必要性が生まれてきます。
変額保険とは、運用実績に応じて将来受け取る保険金や保険を解約したときに受け取る解約返戻金が増減する保険商品になります。変額保険は、インフレの影響を受けにくく、死亡保険金には最低保障があるといったメリットがある一方で、運用リスクがあり、運用コストも高くつくといったデメリットがあります。
外貨建て保険とは、円ではなく米ドルや豪ドルなどの外貨で運用される保険のことです。2022年5月現在、アメリカなどが金利の引き上げを行い、日本との差が大きくなっているため、金利の高い外貨で運用することにより、高い利回りが期待できます。しかし、外貨建て保険はその満期金や年金、解約返戻金を外貨で受け取るため、それをそのまま外貨として使うのであれば関係ありませんが、円に両替する場合は、その時の為替によって資金が目減りしてしまう可能性も考えられます。例えば、保険金が1万米ドルだった場合、1ドル=100円であれば100万円、円安が進み1ドル150円であれば150万円と受け取れる金額に大きな差が生まれてしまうのです。
一般的に生命保険で資産形成するメリットは、その安全性ですが、生命保険でもリスクの高い商品を選ぶと、支払った保険料の総額よりも受け取れる保険金の総額が少なくなる可能性は高まります。また、生命保険は、安全性が求められることから、国債など比較的ローリスク・ローリターンの金融商品中心で運用されている場合が多いため、利回りが低くなりやすいという点がデメリットと言えるでしょう。
また、近年では、一生涯年金を受け取れる終身年金ではなく、決められた一定期間年金を受け取れる確定年金が主流となっています。確定年金の場合、年金の受取期間は、10年などと決まっています。終身年金は、年金を受け取れるのは被保険者が生きている間だけですが、確定年金の場合は、年金受取期間中に被保険者が亡くなっても、相続人が残りの年金相当額を一時金もしくは年金として受け取れるというメリットがあります。
しかし、65歳から月10万円の私的年金をつくる目的で、確定年金に加入すると、長生きした場合には途中で年金の支払いがなくなってしまうため、年金が途絶えた後も何らかの形で保障が得られるよう対策を打つ必要があります。
株式投資や投資信託
近年iDeCoやNISAといった国の後押しもあり、株式投資や投資信託の積み立てを始める人が増えています。iDeCoの掛け金は全額所得控除の対象で、所得税の節税効果を発揮し、NISAはその運用益が非課税というメリットがあり、税制優遇を受けながら投資を始められる上では人気があります。
株や投資信託で資産を運用するメリットは、インフレに強く、低金利下でも高い利回りを狙うことができるという点ですが、運用に失敗した場合、個別株であれば、最悪の場合その価値がゼロになってしまうこともあります。毎日株価が変動するため、ハイリスクハイリターンの投資を行う場合は、毎日の株価チェックが欠かせず、一定の労力をともないます。
つみたてNISAなど、比較的リスクが低いと言われる制度を活用したり、価格変動が穏やかな商品を選ぶことで、そのリスクをある程度抑えることはできますが、リーマンショックのような事件が起こると、どんなにローリスクと言われる商品を選んでいても、大幅に資金が目減りしてしまう場合もあります。
元本保証のない投資ですので、最低でも半年分程度の生活費を預貯金として確保し、余裕資金の中で取り組む必要のある手法です。
また、配当のみで月10万円の資産収入をつくろうと考えた場合には、配当利回り6%の株式を2,000万円分保有する必要がある計算になります。非常にリスクが高く、多くの資金が必要になることから、他の手法と組み合わせて取り組むのがおすすめです。
不動産投資
毎月の家賃収入が期待できる不動産投資も、老後の資産形成を検討する人には人気な手法です。
生命保険や株式投資など他の手法と違って、借入をして投資を行うことができ、入居者が支払う家賃収入からその返済を行うのが一般的です。そのため、手元に多くの資金がなくても投資を始めることができます。そして、景気の影響を受けにくく比較的安定した利回りが見込めることや、不動産の管理は専門業者に任せることが多いため、投資を行うにあたってほとんど手間がかからない点も不動産投資のメリットと言えるでしょう。
一方でデメリットは、空室リスクや災害リスクなどのリスクが存在することです。入居者が見つからないと家賃は入ってきませんし、実物資産ですので大きな地震等の災害によって被害を受ける可能性もゼロではありません。
そのようなリスクを最小限に抑えるために、需要の高い物件を選び、自然災害につよいRC造のマンションを選び、火災保険や地震保険などの備えをしておくことが大切です。
将来的にも高い需要が見込める都心部にあるRC造のマンションを選ぶことで、より長い期間、安定した家賃収入が見込めます。将来の経年劣化にともなって家賃が下がることも考慮しても、月に6万円程度の収益が見込める物件を2戸保有することで、月10万円程度の私的年金がつくれるため、他の手法よりも月10万円の半永久的な私的年金をつくる難易度は低く、うってつけの手法と言えるでしょう。
予定利率の低下で高まる投資の必要性
企業年金の予定利率の引き下げになったというニュースは、私たちの資産形成環境がますます悪化し、対策が必要になっていることを意味しています。予定利率が引き下げになり、生命保険で資産を増やすことが不可能となった今、投資を検討する必要性はますます高まってきます。
今後も低金利の状況はもうしばらく続くものと思われ、さらに予定利率が引き下げになる可能性も十分考えられます。今回紹介した3つの手法をバランスよく取り入れ、老後も豊かな人生を送れるように準備をはじめましょう。
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