確定申告は面倒だと感じる人も多いかもしれませんが、不動産投資のメリットを享受するためには、確定申告や不動産にかかる税金ついての理解が欠かせません。
本記事では、青色申告と白色申告の違い、不動産投資で青色申告をするメリット・デメリット、青色申告で65万円の控除を受けるための要件について解説します。今年初めての確定申告を行う人や、確定申告についてよくわからないと感じている人は本記事を参考に、どのように確定申告をするのが自分に合っていそうか考えてみてください。
不動産投資の確定申告とは?
大前提として、不動産投資をして家賃収入を得たり、不動産を売却した場合には確定申告が必要になります。
確定申告には、青色申告と白色申告があり、さらに青色申告は10万円控除、55万円控除、65万円控除の3種類に大別できます。不動産所得がある場合には、事前に届け出をすることによって、青色申告をすることが可能になります。
それぞれの主な違いは下記の表のとおりです。
| 白色申告 | 青色申告 | ||
特別控除額 | なし | 10万円 | 55万円 | 65万円 |
不動産所得の要件 | 特になし | マンション1室から | アパートやマンションは10室以上、独立家屋は5棟以上 | |
事前の届け出 | 不要 | 必要 | ||
記帳方法 | 単式簿記 | 複式簿記 | ||
電子申告・電子帳簿保存 | 不要 | いずれかが必要 | ||
提出書類 | 確定申告書 収支内訳書 | 確定申告書 青色申告決算書 損益計算書 | 確定申告書 青色申告決算書 貸借対照表 損益計算書 |
不動産投資の場合、減価償却費、借入金利子などの経費を計上できるため、不動産所得がマイナスになることがあります。(減価償却費などのみなし経費が多くを占めるため、帳簿上は赤字でも手元収支はプラスになるケースも少なくありません。)どの方法で申告する場合も、不動産所得のマイナスは他の所得と損益通算することが認められてるため、確定申告をすることによって納める税金が少なくなります
不動産投資の経費については下記の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
青色申告と白色申告の違い|不動産投資で青色申告するメリット・デメリットとは?
次に青色申告と白色申告の違いと不動産投資で青色申告するメリット・デメリットについて詳しく解説します。
青色申告には事前の届け出が必要
青色申告の対象となる年の3月15日まで(1月16日以後に事業を開始した場合は、事業開始から2ヶ月以内)に、管轄の税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出する必要があります。
青色申告をすると最大65万円の青色申告特別控除を受けられる
青色申告をすると、青色申告特別控除(10万円・55万円・65万円の所得控除)を受けられますが、白色申告にはそれがありません。
不動産所得がある場合、マンション1室からでも青色申告をして青色申告特別控除(10万円)を受けることができます。10万円の控除であれば、白色申告と同じ単式簿記(簡易簿記)で記帳すればよいため、難易度は低めです。
青色申告は3年間赤字を繰り越すことができる
青色申告をすると、赤字を最長3年繰り越すことができます。これを、純損失の繰越控除といいます。3年以内に黒字化した場合の税金が安くなり、繰り戻し(前期の黒字と今期の赤字を相殺して税金の還付を受けること)も可能です。
不動産投資の場合、減価償却費等で不動産所得が帳簿上の赤字になった際に、会社員等の確定申告では本業の収入と損益通算が可能なため、赤字を繰り越すケースは殆どありません。なお、損益通算は白色申告でも可能です。
青色申告は貸倒損失を経費として計上できる
白色申告はそもそも会社員向けの簡易的な申告方式のため、貸倒損失を経費計上することができません。
不動産投資の場合は、家賃滞納や夜逃げ等により回収できなかった賃料等が貸倒損失に該当します。
これら貸倒損失は、空室リスクが少ない物件を選び、保証会社を利用することでリスクを軽減することが可能です。青色申告をするしないに関わらず、貸倒損失が生じないよう対策を講じておくことが大切です。
青色申告と白色申告では提出すべき書類の種類が異なる
青色申告と白色申告では提出書類の種類が異なります。
白色申告の場合は確定申告書と収支内訳書、青色申告の場合は確定申告書と青色申告決算書、貸借対照表、損益計算書を提出します。なお、10万円控除の場合は、貸借対照表の提出は必要ありません。
また、場合によっては第三票(譲渡所得がある場合に提出する)や第四票(赤字で青色申告する場合に提出する)の提出も必要になります。
55万円・65万円の青色申告特別控除を受けるためには複式簿記による帳簿付けが必須
55万円・65万円の青色申告特別控除を受けるためには複式簿記で帳簿付けをする必要があります。
単式簿記の方が帳簿付けは簡単で、複式簿記をつけるには、税理士等に依頼するか、確定申告アプリ等を使う方法が一般的です。帳簿付けにかかる費用や手間と控除額を比較して、メリットが大きいと感じる方を選ぶとよいでしょう。
青色事業専従者給与を経費として計上できる
青色申告専従者給与は事業主の所得を超えない金額であれば、原則全額を経費として計上することができます。
専従者給与とは、生計を一にする配偶者や15歳以上のその他の親族で、専らその事業に従事している人へ支払う給与のことで、注意点は専従者給与を受け取る親族は扶養に入れなくなることです。
白色申告にも事業専従者控除という制度ありますが、必要経費と認められる金額に上限があり、配偶者は86万円、15歳以上のその他の親族は50万円です。
配偶者や生計を一にする親などに仕事を任せ、専従者給与を支払うことで本人の所得が減り、節税につながるという仕組みです。
ただし、不動産賃貸業の場合は、配偶者等に白色申告の場合の上限を超えるほど多額の専従者給与を出して節税することは、社会通念上認められないでしょう。特に、区分不動産を数戸所有し、管理を不動産会社に任せている場合など、不動産の維持管理にほとんど手間がかかっていないケースでは、専従者給与の支払いは認められないと考えておきましょう。
青色申告事業者は家事関連費を必要経費にすることができる
青色申告をしている個人事業主の場合、自宅兼オフィスの賃料や電気代等の一部を経費として計上することが認められています。
ただし、不動産投資のみの場合は、大規模で不動産賃貸業を展開しているケースを除き、家事関連費を必要経費とすることは難しいでしょう。
青色申告者は少額減価償却資産の特例の活用が認められている
青色申告の場合、1個あたり10万円以上30万円未満の減価償却資産を、年間合計300万円まで一括償却できる少額減価償却資産の特例を活用することができます。この特例を活用することで、従来であれば耐用年数に応じて償却する資産を、即時償却することが可能になります。1年で出せる経費が多くなるため、利益が急に増えた際の節税などによく使われる手法です。
なお、不動産投資の場合は、この特例の活用が認められるのは、家具家電付きマンションに設置する家電など、あくまでも不動産賃貸業に関わる備品に限定されます。
不動産投資で青色申告をして65万円の控除を受けられる要件とは?
不動産投資のみで、青色申告をして65万円の控除を得るためにはどのような条件を満たす必要があるのでしょうか。具体的に解説します。
事業的規模で不動産投資を行っている
事業的規模で不動産投資を行っている場合、55万円もしくは65万円の特別控除を受けることができます。
この事業的規模と判断される基準になるのが『5棟10室』です。独立家屋の場合は5棟以上、アパートやマンションなど集合住宅の場合は、10部屋以上保有している場合にその基準を満たします。住宅以外の独立家屋の場合は、部屋数ではなく棟数が基準となり、5棟以上を保有している場合は事業的規模に該当します。
電子申告もしくは電子帳簿保存を行う
事業的規模の要件を満たしている場合、控除額を55万円から65万円にするためには電子申告もしくは電子帳簿保存を行う必要があります。
電子申告とは、e-Taxを利用してインターネット上で確定申告を行うことで、マイナンバーカードを利用する方法と事前に税務署で取得したID・パスワードを利用する方法があります。
電子帳簿保存とは、確定申告に関わる全ての元データ(帳簿や書類)を紙ではなく、電子データとして作成・保存する方法です。スキャナ保存が認められているのは取引先から受け取る注文書や請求書、領収書など一部書類に限られ、紙で帳簿付けをすることなどは認められません。真実性の確保と可視性の確保という2つの要件を満たす必要もあるなど、比較的導入のハードルが高いため、電子申告の方が難易度は低くおすすめです。なお、電子帳簿保存を選択する場合は電子帳簿保存を始める3ヶ月前の日までに税務署に承認申請書を提出する必要があります。
不動産投資をするなら青色申告にチャレンジした方が良い?
白色申告よりも青色申告の方が手続きは煩雑ですが、節税という面ではメリットがあります。
特に、10万円の控除であれば、事業的規模に満たない人でも選択でき、複式簿記による帳簿付けなども必要ないため、比較的チャレンジしやすいでしょう。
ただし、不動産所得の金額が青色申告特別控除前の段階でマイナスの場合は、特別控除は受けられず、黒字が少ない場合もその金額が控除額の限度になるため、不動産投資の黒字額が少ないうちは節税のメリットも少なくなります。
不動産投資で青色申告にチャレンジした方がよいかの答えは、どのような不動産投資をしているか、今後どのようにする予定かなどその人の状況によって異なります。本記事を参考にメリット・デメリットを理解し、自分に合った方を選びましょう。
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不動産投資の確定申告や税金についての理解を深めよう
不動産投資をする場合、確定申告が必要です。確定申告には青色申告と白色申告があり、青色申告には10万~65万円の青色申告特別控除があります。
なお、不動産所得のみで青色申告をして65万円の控除が受けられるのは、原則事業的規模(5棟10室以上)で不動産投資をしている場合に限られます。また、事業的規模に満たない場合でも青色申告をすることによって、10万円の控除を受けることは可能ですので、将来的に事業的規模を目指す予定の人など積極的に不動産投資をしていきたい人は最初から青色申告にチャレンジしてみてもよいでしょう。
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