「ビジネスケアラー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?簡単にいうと、働きながら介護を担う人を指す言葉ですが、近年この「ビジネスケアラー」と呼ばれる人が増えていることが社会問題と化しています。
本記事では、ビジネスケアラーの増加という社会問題に対してどのような対策が必要なのかについて解説します。もし、自分の親や家族に介護が必要になった場合にどのような備えができていれば状況を改善できるか、もし自分が介護をしてもらう立場になった場合、どのような対策をしていれば、家族の負担を軽減できるのか具体的に考えるきっかけとなれば幸いです。
ビジネスケアラーとは?
ビジネスケアラーとは、前述のとおり、仕事(ビジネス)をしながら介護(ケア)をする人のことを指す言葉です。2030年に318万人に上るという国の試算があり、近年ビジネスケアラーが増えていることが社会問題化しています。
ビジネスケアラーが増加している理由
働きながら介護を担う人が増えた背景には晩婚化と共働き家庭の増加などの理由があるといわれています。
介護状態になる割合は年齢とともに上昇します。厚生労働省の介護給付費等実態統計の概要によると、介護が必要な状態にある人の割合は、65歳以上で7人に1人、85歳以上で2人に1人です。
晩婚化が進み、ビジネスケアラーが増える理由は、親が要介護状態になった際の子の年齢が関係しています。例えば親が35歳の時に生まれた子の場合、親が85歳で介護が必要になったとしたらその時の子の年齢は50歳と、まだまだ働き盛りのため、自ずと仕事と介護を両立する必要性が生じる可能性が高まります。このように子どもを生む年齢が高くなればなるほど、子がビジネスケアラーになる確率は高まるのです。また、定年の延長や教育負担の増加などを理由に60歳、65歳以降も働くことを選択する人、働く必要がある人が増えていることもビジネスケアラーが増えている原因といえそうです。
また、共働き家庭の増加も、ビジネスケアラーの増加の主な原因の1つです。厚生労働省が発表している「令和3年版 厚生労働白書」によると、年々共働き家庭が増加し、専業主婦家庭は減少しており、1980年と2020年を比較すると、その割合は共働き家庭は2倍に増え、専業主婦家庭は半減しています。2020年時点の共働き家庭の数は専業主婦家庭の2倍以上にも上ります。専業主婦が多かった時代であれば、専業主婦の妻が介護を一手に担う家庭も数多くあったと考えられますが、共働き家庭が増えた現代ではその構図が成り立たなくなっており、誰かが働きながら介護を担う必要性が生じるということです。
ビジネスケアラー増加の背景にある問題
ビジネスケアラーが増加することでどのような問題が想定されるのでしょうか。
まず、介護と仕事との両立で疲弊し、生産性が下がるという点が問題視されています。仕事と介護を両立できずに介護離職するケースや、介護と育児などが重なり、負担がさらに重くなるケースも想定されます。介護によって労働生産性の低下や離職による経済損失は9兆円を上回るという国の試算もあります。
仕事と介護を両立することが肉体的な負担になることは言わずもがなですが、介護を担う人が誰にも相談できず社会から孤立してしまうなどの精神面の負担や介護費用の負担に加えて離職や時短勤務などによる減収などの金銭的な問題も無視できません。
介護にかかる負担を減らすために今からできることは?
将来ビジネスケアラーの問題に直面した際に困らないようにするためには、親の介護などで自分がビジネスケアラーになるケースや自身の介護のために家族がビジネスケアラーになるケースを自分こととして具体的に想像し、対策を講じることが大切です。
将来の介護にかかる負担を減らすためにできることを紹介します。
介護が必要になった場合に活用できる制度について理解を深める
まず、公的介護保険制度や勤務先で活用できる制度など、将来自分や家族に介護が必要になった場合に活用できる制度について調べておきましょう。
介護が必要になった際に活用できる制度としては、下記の表のような制度があります。下記以外にも、自治体が主体となって支給している給付金などもあるため、自身や親が住んでいる自治体で活用できそうな制度がないか調べておきましょう。
制度の名称 | 制度の概要 |
高額介護サービス費 | 1ヶ月に支払った利用者負担の合計が負担の上限を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度。 |
高額介護合算療養費制度 | 医療保険と介護保険における1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)の医療保険と介護保険の自己負担の合算額が高額な場合に、自己負担を軽減する制度。 |
福祉用具・住宅改修 | 福祉用品のレンタル・購入費用や手すりの取り付けや段差の解消などの小規模な住宅改修工事にかかる費用の助成を受けられる制度。 |
介護休業制度 | 対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できる制度。休業開始時賃金日額の67%相当額の介護休業給付金が支給される。 |
介護について相談できる人や機関を見つけておく
相談できる人がおらず、ビジネスケアラーの精神的な負担が重くなるケースも少なくありません。役所の窓口や社会福祉協議会、地域包括支援センター、医療機関の相談窓口など介護について相談できる先は多くあるということを頭に留めておきましょう。
介護にかかる費用を把握し、計画的に準備する
2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査によると、公的介護保険の以外で初期費用が平均234万円、毎月の費用が平均15.8万円という調査結果が出ています。
家族がビジネスケアラーとなることを避けたいと、介護施設に入る場合には、在宅介護以上の費用がかかることが一般的です。平均的な介護施設を選んだとしても、入居時の初期費用として数十万円~数百万円かかり、月々の負担額も公的年金のみでは足りないケースが少なくありません。
公的介護保険や公的年金などでは賄いきれない部分に関しては、すぐに用意できる金額ではない可能性が高いため、若いうちから計画的に準備をしておきましょう。
介護にかかる費用に関しては、下記記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
https://www.ge-creation.co.jp/column/rougosikin/
https://www.ge-creation.co.jp/column/rouzinhomu/
介護による収入減に備えて資産収入を準備しておく
先ほど介護には毎月15.8万円の費用がかかるとお伝えしましたが、生活費+αでかかる介護費用だけでなく、介護離職や介護のための時短勤務、休職など介護が原因で収入が減ってしまうケースにも備えておく必要があります。
介護期間は10年以上15年未満が最多と、介護期間が長期化するケースも少なくないため、預貯金を切り崩す方法だけでは資産が足りなくなる恐れがあります。例えば、介護のための貯えが1,000万円あったとしても、月15万円の介護費用を負担し、5万円減収となったケースであれば、50ヶ月(4年2ヶ月)で資金が底を尽きてしまう計算です。
このように預貯金などストック資産のみでは不十分なため、フロー資産と呼ばれる安定的かつ長期的に受け取れる資産収入も準備しておくことが大切です。
来たる介護に備えて資産を作る方法4選
介護に備えた資産を準備する方法は主に4通りあります。
今回紹介する4つはどれが良い悪いではなく、一長一短あるため、上手に組み合わせてバランスの良い資産を築きましょう。
預貯金
介護にかかる初期費用と半年~1年分の生活費程度を目安に貯蓄しておくと良いでしょう。
預貯金のメリットは、使途が自由な点ですが、その反面インフレに弱いという特徴もあります。介護費用が高騰した場合に対応できない可能性があるため、預貯金のみで介護資金を準備するのは避けたほうが良いでしょう。
民間の介護保険
民間の介護保険は一定上の要介護認定を受けると一時金として受け取れるものが多いため、介護にかかる初期費用に充てることができます。民間の介護保険は介護が必要ないまま亡くなったケースなどでは掛け捨てになってしまうことがデメリットですが、特に前述の介護にかかる初期費用と半年~1年分の生活費程度の貯蓄がまだできていない状態の人などは検討しておくと良いでしょう。
なお、保険商品は全般的に預貯金と同じインフレに弱いという特徴を持つため、注意が必要です。
NISA・iDeCo
NISAやiDeCoは前の2つのデメリットであるインフレ対策として有効な選択肢です。
NISAはいつでも資金を引き出せるため、自分がビジネスケアラーになるケースにも活用できます。
一方、iDeCoは60歳まで引き出せないため、自身の老後資金や自分や配偶者に介護が必要になった時のための資金の準備として有効です。
ただし、どちらも引き出したいタイミングで相場が下がっている場合には損をしてしまうことも考えられるため、注意が必要です。
不動産投資
投資用不動産からの家賃収入があれば、月々の介護費用の負担や収入減に対応できます。インフレにも強く、売却して現金化して介護費用に充てることも可能です。
また、金融機関からの借入を活用することで、少ない自己資金で大きな資産を築くことができるため、教育費などの負担が重く、介護のための積み立てが十分にできない人でも無理なく継続できるでしょう。
ただし、安定した資産収入を得るためには物件選びが重要です。安定した家賃収入を長期的に得ていくためには、長期的に安定した賃貸需要のある不動産を選ぶ必要があり、将来的にも単身者が多く集まり、人口減少が少ないとされる都心の単身者向けマンションがおすすめです。
介護が必要になった場合に備えて、準備を始めよう
自分が介護する立場になっても、介護してもらう立場になったとしても、働きながら介護するというのは簡単なことではありません。ただし、準備をしておくことで軽減できる負担も少なからずあります。特に、金銭面の負担は、十分対策が可能です。自分や親が元気なうちから準備を進めておきましょう。
ジーイークリエーションでは、今回紹介した保険やNISA、iDeCo、不動産投資などを上手に組み合わせて、強い資産を築くお手伝いをしています。NISAやiDeCo、不動産投資に関するご相談はもちろん、生命保険の見直し、年金対策、相続税対策などに関するご相談も受け付けております。
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